各楽器の紹介

バンジョー

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 1619年にアフリカから奴隷制度によってアメリカに連れて来られた人々が故郷の楽器を思い出して、太鼓に弦を張ったものが原型となり、 いくつかの楽器の特徴を取り入れて生み出した作ったのが始まりだと云われており、アメリカ南部およびアパラチア地方で奴隷を強要されていたアフリカ人たちが、アフリカでなじんでいた楽器に習い、最初期のバンジョーを製作、この最初期のバンジョーの幾つかが、"ゴード・バンジョー(gourd banjo)"と呼ばれるようになりました。("gourd"は、"ひょうたん"の意) また、セネガンビア地方(セネガル・ガンビア地方)のジョラ民族によって演奏されていたエコンティン(Akonting)という釘形の リュート系民族楽器が、バンジョーの祖先に当たる楽器の一つとされています。

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 当初は、ウリをくり抜いたものに弦を3本張っただけのシンプルな構造だったが、18世紀の産業革命で物が簡単に作れるようになったことで、形は丸く、木・竹・皮を使用したものに変化し、19世紀には工業製品として大衆音楽に使用されるようになっていきました。 その後、20世紀にはアメリカからイギリスやフランスへと広まり、アールデコの装飾が施されたり絵が描かれるようになったりするなど、さらに進化を遂げていき、現在では4弦・5弦・6弦のものや、バンジョー・ウクレレ、バンジョー・ギターなど、様々な形態に変化した バンジョーも見られますが、共通の定義としては、形が丸く皮が張っているものとなっています。  "バンジョー"という名前は、通常、キンブンドゥー語(Kimbundu)の"バンジャー(mbanza)"に由来するとされており、"bandore"という言葉の方言の発音から"bamjo"という言葉が生まれたとする語源学者たちもいますが、最近の研究によれば、"bandore"は、楽器のネックに使用される"bamboo(竹)の棒"を意味するセネガンビア地方の言葉から派生したものに過ぎないと されているのが通説のようです。エコンティン(Akonting)という釘形の リュート系民族楽器が、バンジョーの祖先に当たる楽器の一つとされています。

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 現在ではバンジョーは通常、カントリー音楽やブルーグラスで使用される楽器ですが、歴史的にはバンジョーは、19世紀のミンストレル・ショー(白人による黒人音楽の演奏)における場合と同様に黒人伝統音楽において中心的位置を占めていました。 アフリカ系アメリカ人たちはバンジョーの導入により、カントリー音楽とブルー・グラス両者の発展の初期段階で強い影響力を及ぼし、 バンジョーとフィドルの演奏テクニックの革新によっても、更に同様に強い影響力がありました。近年は、ポップ・クロスオーバー・ ミュージックなど広範囲の音楽分野で演奏されるようになっています。  アメリカで発展、完成された現代のバンジョーは、ディキシーランド・ジャズによく使われる4弦バンジョー(プレクトラムとテナー・ バンジョー)とブルーグラスやオールドタイムで使われる5弦バンジョーを筆頭に、様々な形態に分化しています。 バンジョーウクレレ、バンジョーベース、ギターのように6弦仕様のバンジョーも現在では親しまれつつあります。 ブルーグラスでバンジョーは、親指にサムピック、人差し指と中指にフィンガーピックというピックを付けて3フィンガーという方法で演奏します。ブルーグラスらしさが出る、なくてはならない楽器です。

 バンジョー

マンドリン

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 マンドリンは17~18世紀頃にリュートという弦楽器から派生して作られた楽器といわれていますが、マンドリン音楽自体は、 19世紀-20世紀初頭にかけて、イタリアで流行しました。マンドリン製作家のヴィナッチャという人によりマンドリンが現在の形のものに改良され、今のトレモロ奏法などが確立されたそうです。その後、第二次世界大戦の敗北でイタリア音楽界が大打撃を受けた上に、 戦時中プロパガンダに利用されたという事情も重なって、衰退の一途を辿ります。

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 Orville.H.Gibson がマンドリン製作を始めたのは、1890年代 - ブルーグラスで使用されるフラット・マンドリンの歴史はここから始まりました。市場で高く評価されたギブソン・マンドリンは名声に後押しされ1902年には"Gibson.Mandolin.Guitar.Manufactuaring.Company"を設立、これが現在のGibson社の前身となります。デザイン上の最初の重要な 改革が行なわれたのは1910年。この時点で、F-Style、A-Styleの仕様が確立されたようです。フラット・マンドリンは、ストリングバンドやジャグバンド、ブルーグラスの花形楽器として使用されながら、さらにはロックやジャズでも使われて、今日へと至っています。

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 Orvilleのギター、マンドリン製造はトップ、バックだけでなく、サイドも削り出しによって製作されていたようで、これはヴァイオリン製作から採り入れたアイデアと云われています。その頃は薄い板に曲げ加工を施してサイドの曲面を作り出す手法が中心になっていたにもかかわらず、オーヴィルは“圧力をかけて曲げた材はストレスを生じているので、削り出しによる材の方が音響特性の点で優れている”という信念があったことに由来していたようです。ヴァイオリン製作の手法をギターに採り入れた美しいアーチトップのデザインの源流は、オーヴィルが生み出したとも云われています。

 マンドリン一覧

フィドル(ヴァイオリン)

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 フィドルとは、弓を用いて演奏する擦弦楽器、特にヴァイオリンを指す名称です。「ヴァイオリン」という言葉がイタリア語から派生した言葉であるのに対し、フィドルは英語で、ヴァイオリンとまったく同一の構造を持っていますが、主にフォークミュージック、民族音楽で使われるヴァイオリンのことを指し、バンジョーやマンドリン(フラットマンドリン)などとともに、アイルランド音楽、カントリー・ミュージックやブルーグラスなどの音楽でも使用される弦楽器です。

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 その先祖といわれているのが、アラビアのラバーブや、中世にオリエントから伝わり15世紀のスペインとフランスで広く使われたレベックという楽器などです。

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 民族音楽やフォークミュージックにおいては、ソロの演奏が多く、二挺のフィドル演奏は北アメリカ、スカンジナビア地方、アイルランド(アイリッシュスタイル)の民族音楽に広く見られるようです。有名なフィドル奏者としては、アリソン・クラウス、ケニー・ベイカー、バイロン・バーライン、リチャード・グリーン、マーティン・ヘイズ、ケヴィン・バークなどが挙げられます。

 中世期に用いられた擦弦楽器の一種である中世フィドルは当時、各種呼称があり、フィドル (fiddle) 以外にも、ヴィエール (vielle)、ヴィウオラ (viuola)、フィーデル(Fiedel)とも呼ばれました。名称からも分かるように、後のヴィオール属やヴァイオリン属の祖先と見なすことができます。中世フィドルと見なせる楽器には形や大きさなどについて、様々なバリエーションがあり、標準的な形状を特定することは難しいようです。最も初期のものは、堅い木をくりぬいた胴体に柔らかい共鳴板を貼り付けたような構造であり、硬い胴体に共鳴板を貼り付ける構造は基本的にその後も続きます。胴体は楕円型または卵形のものが多く、弓を使いやすくするためのくぼみを側面に持つものも多かったようで、共鳴板には孔 (サウンドホール) が空けられています。弦の両脇にC字型あるいはf字型の1対の穴が開けられていることが多く、駒や指板は、それを持つものと持たないものが両方ありました。15世紀頃までには、胴体とネックが明らかに分離され、テールピースや駒をもつ、ヴィオール属やヴァイオリン属に類似の形状のものが増えていきました。

 バイオリンは、楽器としての完成度は並はずれており、改良を重ねて徐々に現在の形になった訳ではなく、1550年ごろ突如として、完全な形で誕生したと云われています。この頃の絵画にバイオリンが描かれていることからも推測されており、歴史に残っている最初期の製作者は、北イタリアのクレモナで活躍したアンドレア・アマティと、サロという町のガスパロ・ディ・ベルトロッティの二人であると云われています。

bluegrass

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 フィドルとヴァイオリンの違いは、演奏態度や演奏技術にもあるようですが、案外知られていないところでは駒(ブリッジ)の部分のカーブが微妙に違っていることにあるようです。和音やスピード感のある速弾きを要求されることが多く、クラシックヴァイオリンの駒の形や弦の高さだと演奏に無理が生じてきます。フィドルの方がよりフラットでヴァイオリンの方がやや曲線的な仕上げとなっており、弦高も大抵は低めにセッティングされており、ブルーグラスではスティール弦に揃えるのが一般的で、音色もヴァイオリンと異なって、哀愁を帯びた響きが強いのでブルーグラス演奏によく合うのかもしれません。演奏方法がクラシックと異なり、より激しく大胆な演奏をします。
 歌や他の楽器のリードの合間に入れるフレーズなどによる伴奏でも活躍します。フィドルとヴァイオリンに共通して云えるのは、女性奏者に美人が多いということのようです。

 ヴァイオリン

Martin D-28

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 Martin社のD(ドレッドノウト)サイズギターの原形は、1916年からMartin社がOEMとして、ボストンの「オリバー・ディットソン社」に提供していた、12フレットジョイント、スプルーストップ、マホガニーサイド・バックの3種類のギター「Style 111 / 222 / 333」でした。
1931年、Martin社は、このモデルを元に、自社ブランドでのDサイズギターの製造を開始します。
現在のD-28は、「D-2」と名付けられたギターがその原形であるとされ、「D-2」ギターは12フレットネックジョイント、スプルーストップ、ローズウッドサイド・バックであり、1931年に4台が製造されました。
同年、正式にMartin D-28として1台が製造されます。(その後「D-2」は1932年に2台、1934年に1台製造されています)そして1934年、初の14フレットネックジョイントのMartin D-28が誕生しました。
1939年にはフォワード・シフテッド・Xブレイシングが廃止されたり、ペグをシールドバック・グローバーに変更するなどのマイナーチェンジが施されます。
14フレットとなった1934年製のHerringbone(ヘリンボーン)をあしらったD-28は1947年まで生産、翌1948年からnon Herringbone、すなわちヘリンボーンがないタイプのD-28に変更され、このD-28が現在のMartin D-28のスタンダードモデルとなり、1970年代前半には、年間生産本数も5000本近く作られました。
D-28のドレッドノウト、シトカスプルーストップ、サイドバックにローズウッド、指板・ブリッジにエボニー、ネックはマホガニーという材構成は普遍のものとなり、その後1976年には、HD-28というモデル名でヘリンボーンが復活しました。この頃のMartin社はアコースティックギターのブームに伴い、量産体制を整えていきました。
「ブルーグラスギター= Martin D-28」というような公式が出来上がっていった背景には、D-28は存在感のある低音域や、クリアな高音域が持ち味とされ、バンジョーやフラットマンドリン、フィドルと競演するために、メリハリ利いた硬めの音が必要とであったことが挙げられます。そして、ブルーグラス・ミュージックでは必然的にMartin D-28は重宝されるようになったのです。

 Martin D-28

ウッドベース(コントラバス)

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 コントラバス(独: Kontrabass / 英: Contrabass / 伊: Contrabbasso)は音楽における音域の区分の一つで、バスのオクターブ下に位置付けられます。ウッドベースは元々はヴァイオリン族ではなく、ヴィオール族に属します。ヴィオール (Viole) というフランス語は、イタリア語のヴィオラ Viola と同様、古くは擦弦楽器の総称であったとの見解があり、17~18世紀フランスにおいては、イタリア語のヴィオラ・ダ・ガンバと同じ楽器を指していました。歴史的にはヴィオラ・ダ・ガンバ属の最低音域であるヴィオローネ(イタリア語で「大きなヴィオラ」の意味)が前身で、後にヴァイオリン属の特徴を取り入れたと考えられています。独特の特徴として、なで肩の形状、平らな裏板、4度調弦、弓の持ち方などが挙げられます。

bluegrass

 打楽器が入ることの少ないブルーグラスでは、ベース楽器がリズムの中心を担います。 他の楽器のような派手なソロは滅多に弾くことはありませんが、 その名の通り、バンドの根幹を支える楽器パートです。

 ウッドベース

リゾネーター/ドブロ

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 その昔、ギターの上にフォークが落ちた時に偶然発生した金属音が心地良い響きを出したことに所以があるようです。
  第二次世界大戦前、エレクトリック・ギターが跳梁する前に、ギターの音量を増大させるために考案され、リゾネーターと呼ばれる円形の薄いアルミニウム製の共鳴板をブリッジの下に取り付けた構造をしており、ボディはブルースに使用される場合は金属製の物が多く、ブルーグラスには木製のものが使用されることが多いようです。ブルーグラスで使用される木製ボディは、大音量が得られるようになっており、ナショナル・ギター社、ドブロ・ギター社、タット・テイラー社などのメーカーが有名で、リゾネーター・ギターを「ドブロ・ギター」と誤称する事がありますが、ドブロギターは英語ではDobro,若しくはResophonic Guitarと云われ、チェコスロバキア出身のドペラブラザースが発明、商品化しました。ドブロという名前は、ドペラのDoとブラザースのbroを組み合わせて出来た造語のようです。  リゾネーター・ギターの王道と言えば「NATIONAL」です。リゾネーターとは、金属で出来たボディー内に反響盤を入れて音を増幅させるエレクトリック・ギターが生まれる以前の方法で、ナショナル社は、古くからリゾネーターギターのメーカーとして知られ、今やフィンガーピッカーやスライドギタリストの間では主流であると言っても過言ではなく、ハワイアン、ブルース、カントリー、ブルーグラス、フォーク及びワールド・ミュージックなど幅広いジャンルで根強い人気があります。ボディーの真ん中に輝くように鎮座するメタルのプレートが醸し出す独特なルックス、スライドバーで鳴らした時の他を圧倒する威圧感溢れるサウンドなど、リゾネーターの鳴りは独特な個性に溢れています。スライドギター専用のイメージも有りますが、フィンガーやピックで普通に弾いても味わい深く、重厚な音圧とワイルドな倍音感、伸びやかなサスティーンから奏でられるトーンに魅了されたプレイヤーも多いはずです。

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 リゾネーターは、アメリカのカントリーミュージックでは古くから使用されており、ロイエイカフと共演したブラザーオズワルドの演奏は特に有名です。世界中ににドブロギターの強烈なインパクトを与えたのは、1940年代にフォギーマウンテンボーイズに参加したジョッシュ・グラビス(アンクルジョッシュ)と語られています。彼はバンジョー・プレイヤーのアール・スクラッグスの演奏スタイルをドブロにも応用し、ブルーグラスの早弾きにも対応出来るスタイルを編み出しました。後に、セルダムシーンのマイク・オールドリッジはジャズやブルースとの融和を試みたようです。また、1970年代に登場したジェリー・ダグラスは、リゾネーターの奏法に革命を引き起こしました。斬新なブルーグラスでの演奏はもちろんの事、あらゆるジャンルの音楽にリゾネーターを持ち込み、認知度を大きく高めました。

 リゾネーター/ドブロ

ブルーグラスの楽しみ方


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